凄まじい台風がようやく過ぎ去った朝、散歩の途中の道の上で冷たい雨に打たれたまま固まった黒い小さな物体を見つけました。ピクリともしないそれはまるで石ころかボロ布のようでしたが近づいていくにつれ無残な姿の一匹の仔猫とわかりました。どれくらいの時間この場所に居たのか。もはや生気を感じない。焦りました。このままではいつカラスに狙わられても不思議ではありません。

慌てて駆け寄りどうか生きてますようにと祈りつつ声を掛けると消え入るような小ささでそれでもニャアと応えてくれました。良かった、間に合った!
急いで連れ帰りドライヤーで温めてやることに。しばらくすると続けてニャアニャアと鳴きました。ひとまず胸を撫で下ろしつつ身体を眺めてみれば毛もまだ薄くまばらで骨と皮だけのガリガリ。この暴風雨の中よく助かったなと感心していると、体温が上がり元気が出たのかなにやら訴えるように鳴き始めました。これはさぞや空腹に違いないと思いルーチェ(我が家の猫)のウェットフードをあげるやいなやガツガツと物凄い勢い。丸一袋たいらげた後は使い古したケージに敷物をした即席シェルターの中でしばらく休んでいましたが気がつくと居なくなっていました。あっという間の出来事でした。

少し心配ですが後を追うことはしません。立って歩けるまで回復したならそれで良し。この山にはたくさんの野生動物たちが暮らしています。散歩中に出くわしたりとしばしば見かけることはありますが不用意に近づくことはしません。それが共存のルール。野良猫もここでは彼らの仲間。余計な手は差し伸べないことにしています。人間が勝手に良かれと思って取る行動が時に彼らの危機を招くことに繋がるからです。彼らと距離を置くことがお互いのため。

それにしても母親は?兄弟は?
ふと少し前のことを思い出しました、近くの道のあちらこちらにこの仔と同じ色をした毛の塊(おそらくカラスの仕業)が落ちていたこと。あれはもしかしたらこの仔の母猫もしくは兄弟のもの?いずれにしてもこの仔に家族は見当たらず満足にご飯を食べられていないことだけは事実でした。

案の定、それから毎日、警戒をしながらもご飯目当てに我が家の近くに顔を見せるようになりました。
自力でご飯を確保できない野良の仔猫に食べ物を与えた以上、こういう結果が待っていてもおかしくありません。それは冷静に受け留めるととても大変なことだし、すでに保護犬8匹保護猫1匹の大所帯の我が家にはかなり厳しいこと。それでもあんな状態で出会ってしまったら見捨てて通りすぎることはできませんでした。
先にも書いたようにこの山に住むたくさんの野生動物と同じく野良猫と言えどむやみに不必要な手出しはしないことを心掛けて暮らしていますが今回は状況が状況でした。

くろすけは毎日朝昼晩とご飯を食べに来て(3時にはオヤツも)みるみる元気になってきました。肉が付いた身体は丸みを帯びようやく普通の猫らしく見え、毛もずいぶん増え、何より満足に黒眼が確認できないほどうつろで焦点が定まらなかった目がしっかり大きく開くようになりました。ひょろひょろと倒れそうになっていた身体は全力ダッシュができるほどになりました。やはり生きることは食べることなり、です。

とりあえず、かけがえのないひとつの生命が消えずに済みました。引き続き毎日ご飯(とオヤツ)の用意だけは欠かさずに、これからのことは様子を見ながらゆっくり考えようと思います。

Monkie Shiota